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「文豪ブログ」…それは若い日の過ち
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「塊魂」第6話@kimr

第6話「街」

 「売ろうか?」そんな衝動に駆られる。「塊魂」が俺に与えた敗北には、そのくらいの罰則が必要だ。俺は、「塊魂」を甘やかしすぎた。あの、屈辱の中古ゲームコーナーに、青すぎるこのパッケージを、陳列させるのだ。そこは、糞ゲーの墓場。見知らぬ誰かが、幾らかの金銭と引き換えに、期待はずれのゲームを手放した証拠。ゲームにとって、最後の戦いの地だ。そこで、誰かに拾われなければ、産業廃棄物として、処分される。精神的に、追い詰められるだろう。

 「愚か者が頭に乗りおって。貴様なんぞ、我が手で陳列してくれよう。」再び、怒号が部屋を揺らす。「カンカンカンカン...」始発電車が、淡々と家の前を通り過ぎる。その無機質な音を聞き、我に返った。危ない。俺は、何を考えているのだ。さっき、買ってきたばかりではないか。それも、新品で。まだ見切るのは早すぎる。大人気ない。自分の考えを正すと、王子を、再び地球へと向かわせる。

 玉を大きくした王子は、初めての街に繰り出す。家の中には無かった物で溢れかえる。道に出た。人が、歩いていた。スクーターが玉をかすめる。「化け物め」あのようなパワーとスケール。当たれば、無事ではすまないだろう。いずれは対峙出来る時が、必ず訪れる。今は、ただひたすらに、玉を肥大化させるしかなかった。

 道を危険と見ると、畑を荒らしはじめる。まずは弱者から攻める。これがこの世界の鉄則だ。人参、キャベツ、大根といった物を掻っ攫う。さながら収穫祭だ。そのまま王子は、商店街に雪崩れ込む。買い物中のオバサンに注意しながら、店内を物色する。ラーメン、ケーキ、スイカ。どれも旨そうだ。しかし、玉に絡め取るだけで、王子の腹に収まる事は無い。それだけが残念だ。良く見ると、玉は、確かに肥大化している。しかし、王子の身長はまったく変わっていないのだ。

 王子の背中は、とても頼りない。玉は1mを超すというのに、王子の身長は初期状態のまま。5cm程度しかないのだ。思えば、こいつは目の前の嗜好品に目を眩ます事も無く、ただひたすら、玉を大きくする事に執着しているのだ。優に20倍もある玉を、転がし続けているのだ。何と健気な事か。自分は、愚かだった。自然と、涙がこぼれる。スティック捌きに、熱が入る。「王子、頑張れ」励ましている、自分がいた。
「塊魂」@kimr (完) | permalink | comments(1) | trackbacks(1)

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この記事に対するコメント

Good site and good blog.Thanks
OnlineSlot | 2006/03/17 11:23 AM
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塊魂第6話「街」更新 ずいぶんと文章もこなれてきて楽しいです。 こんかいは涙なくして読めません。
文豪@blog更新 | おひまなら来てよね/blog+ | 2004/08/30 1:35 AM