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「文豪ブログ」…それは若い日の過ち
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「雨」第2話@fu

8:11[WED][16]

腕時計はいつも通りの時間を指していた。
電車が減速を始めたのを確認しつつ、私はつり革の腕を伸ばし棚のバッグを持っていつもの乗り換え駅で降りた。風雨の勢いは家を出た時のままで、雨粒が網入りの窓ガラスを強く叩いていた。今日の会社への足取りは昨日より重い。ただ、その重さはこの雨のせいではないように思えた。

階段を二つ下りるといつもと同じ水色ラインの入った電車が口を開けて待っている。いつもと同じドアから入りいつもと同じ棚に鞄を投げる…数十年間続けた全くの同じ行為がいつもよりゆっくりして、そして重く感じられた。

実際、手に持つ鞄もいつもより若干多くの書類が入っている。それは「民事再生関連」と赤マジックで殴り書きされた茶封筒で中身はある特定の重みを持っていた。恨めしい事にこの茶封筒は、ついに慢性となってしまった胃の痛みとの関わりも少なくない。朝夕の痛みと共に「リストラだけはしない」と役員会で大口を叩いた3年前の事を思い出す。自らの手腕のせいか時勢が相応しくないのか、世の中の上向きの気流に乗りきれなかった事ばかりを悔やんでここ1ヶ月は満足に眠れなかった。

しかし、今日、この書類を役員会で提出することが38年の勤務の最後の仕事と自分に言い聞かせた。それが大人の責任の取り方だ…と。そう決断を話した時の家族の反応が辛かった。この罪深き私は、明日から、家族と共に笑顔で平穏に暮らせるのだろうか…。顔を上げるとまるで昨夜の妻の涙のような雨粒でぼやけた灰色の景色が見えた。その世界は確実に存在するのにぼやけて、流れて、まるで仮想現実のように感じた。トンネルに入る直前にある高速度路脇の電光掲示板には歯抜けの数字が並んでいた。

AM8:29 28℃
「雨」@fu (完) | permalink | comments(1) | trackbacks(1)

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この記事に対するコメント

Good site and good blog.Thanks
OnlineSlot | 2006/03/17 11:23 AM
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「雨」第2話です。 ものすごい練習文です…OΓZ でも次の方向性がひとつ出たので良しとします!
文豪@blog更新 | おひまなら来てよね/blog+ | 2004/09/05 9:46 AM